食虫植物の進化

【食虫植物の進化⑦】落とし穴式食虫植物の進化と分類【ネぺ吉の夏休み自由研究シリーズ】

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【食虫植物の進化⑦】落とし穴式食虫植物の進化と分類【ネぺ吉の夏休み自由研究シリーズ】

落とし穴式食虫植物の進化と分類とは?食虫植物の進化を紐解く⑦

夏休みの自由研究のテーマに「食虫植物」はどうですか?

特異な進化を続ける食虫植物の進化を紐解く研究シリーズです。

大人も子供も楽しめるように、

なるべく文章をわかりやすく書くことを心掛けて書いています。

研究系の内容は小難しい文章や単語が多いですからね、、。

※本内容を転載する際は、「引用:ネぺ吉のブログ(https://nepenthes.jp)」と記載お願いします。

前回の内容はコチラ
【食虫植物の進化⑥】挟み込み式食虫植物の進化と分類【ネぺ吉の夏休み自由研究シリーズ】

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研究シリーズのまとめはコチラ
【食虫植物の進化:まとめ】食虫植物の進化を知る【ネぺ吉の夏休み自由研究シリーズ】

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落とし穴式食虫植物の進化と分類

落とし穴式食虫植物は、

進化の過程で、特殊化した葉が形成され、

落とし穴を形成するようになった食虫植物です。

落とし穴式食虫植物の分類

落とし穴式食虫植物は主に3属に分類されます。

・ウツボカズラ(ネペンテス)

・ヘイシソウ(サラセニア)

・フクロユキノシタ(セファロタス)

ウツボカズラ(ネペンテス)は、

主に東南アジアの熱帯雨林に生息していて、

低地から標高3500mまで広く分布しています。

原種だけで200種以上が発見されていて、

種類はとても多いです。

関連ページ
【食虫植物ネペンテス(ウツボカズラ)とは】世界には150種以上!?捕食袋の仕組みや花言葉、人気な種って?

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ヘイシソウ(サラセニア)は、

アメリカ合衆国の南部・東部を中心に、

カナダや南アメリカの一部に生息しています。

原種は8種確認されていて、

小型から大型種は最大120㎝ほどまで生長します。

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【食虫植物サラセニア(ヘイシソウ)とは】原種は8種?捕食の仕組みや花言葉、人気な種って?

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フクロユキノシタ(セファロタス)は、

オーストラリアの限られた地域にのみ生息している、

一属一種のみの食虫植物です。

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【食虫植物セファロタス(フクロユキノシタ)とは】一科一属一種の食虫植物。名前の由来や捕食の仕組み、花言葉など

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落とし穴式食虫植物の機能と進化

上記の通り、各大陸や島々で落とし穴式の食虫植物が存在しますが、

進化系図を見ると、面白いことに、

全く別の種から進化してきているのです。

ヘイシソウ(サラセニア)は、

ナス目と呼ばれるトマトやリンドウ目のコーヒーの木などに近いですし、

フクロユキノシタ(セファロタス)は、

バラ目のモモやキントラノオ目のポプラなどに近かったりします。

どの地域も共通しているのは

土壌中の栄養が枯渇していて、植物にとっては厳しい環境です。

ウツボカズラ(ネペンテス)が生息する熱帯雨林の環境は

植物の生存競争が激しく、土壌からの栄養素を得るのが難しく、

フクロユキノシタ(セファロタス)が生息するオーストラリアの海岸付近は

他の植物があまり育たない枯渇した土壌です。

食虫植物の捕虫方法がさまざまある中で、

多くの昆虫をとらえられるのがこの落とし穴式といえます。

進化の過程で、捕獲に特化した形態や機能が発展し、

さらに、香気化合物や粘液分泌の進化が起こったとされています。

落とし穴式捕虫器の仕組みと驚くべき特徴

落とし穴式の食虫植物は特殊な腺から分泌される粘液によって

獲物を引き込んで落とし込む構造を持ちます。

獲物を捕虫袋に捕らえると、

粘液には消化酵素が含まれており、獲物を消化して栄養を取り込みます。

多くの種類の落とし穴式食虫植物は、

粘液に加え、光や振動による刺激で捕食反応を示すため、非常に効率的な狩猟機能を備えています。

落とし穴式食虫植物の進化史

落とし穴式食虫植物)は、

恐竜のいた1億年以上前に現れ、古代から現代に至るまで進化を続けています。

ウツボカズラ(ネペンテス)の進化の歴史

4500万年前: ウツボカズラ(ネペンテス)科の祖先が出現。

1000万年前: ウツボカズラ(ネペンテス)属が現れ、マレーシアで多様化。

700万年前: インドネシアでウツボカズラ(ネペンテス)の多様化が進行。

300万年前: ネペンテス・アルバの出現。

200万年前: ネペンテス・ビカルカルタが出現。

100万年前: ネペンテス・ラジャが出現。

現在: ウツボカズラ(ネペンテス)は世界中に広がり、200種以上が発見されている。

ヘイシソウ(サラセニア)の進化の歴史

約4,000万年前:ヘイシソウ(サラセニア)属が誕生する。

約2,000万年前:アメリカ南東部が乾燥化し、ヘイシソウ(サラセニア)属は落とし穴式捕虫器を発展させる。

約1,000万年前:ヘイシソウ(サラセニア)属は葉の形態や花の構造など多様化し始める。

約300万年前:氷河期によって北アメリカに広がる森林帯が減少し、ヘイシソウ(サラセニア)属の生息域が限られる。

約100万年前:ヘイシソウ(サラセニア)属の多様化が進み、現在の種の祖先が誕生する。

現代:サラセニア属はアメリカ南東部や中南米に分布し、原種8種、天然交配種含め50種以上が確認されている。

フクロユキノシタ(セファロタス)の進化の歴史

約1億3000万年前: フクロユキノシタ(セファロタス)属の祖先となる食虫植物が出現。

約5000万年前: 現在のオーストラリアにおいて、フクロユキノシタ(セファロタス)ス属が発生する。

約400万年前: 現在のニュージーランドにおいて、フクロユキノシタ(セファロタス)属のいくつかの種類が発生する。

19世紀: フクロユキノシタ(セファロタス)属の多くの種類がヨーロッパに持ち込まれ、栽培されるようになる。

落とし穴式食虫植物の適応力と生態系の変化

落とし穴式食虫植物は、

獲物を誘き寄せ、素早く捕獲し、消化することで生存を維持しています。

落とし穴式の捕虫器は、大きく下位部分と上部に分けられます。

下位部分は、液体が貯まる袋状の構造で、周りに粘液質の腺が分布しています。

上部は、獲物を誘き寄せるための装飾的な構造で、色鮮やかな斑点や蜜腺があることが多いです。

落とし穴式捕虫器の進化により、生息環境における食物の不足を補うことができるようになりました。

また、捕獲した昆虫が栄養源となることで、周囲の生物との生態系の関係も変化し、

独自の適応力を発揮してきたのです。

落とし穴式捕虫器の進化と生態系の相互作用

落とし穴の深さや形状、内部構造、消化液の性質などが、

生息する環境や獲物の種類に合わせて多様化し、

最適な状態に進化しています。

例えば、大型の昆虫や、時には哺乳類まで捕食するウツボカズラ(ネペンテス)は、

大きな袋を地面から地上数mまで、つる状に伸ばした茎から、

多くの捕虫袋を付け、獲物を待ちかまえます。

対して、フクロユキノシタ(セファロタス)は、

地を這うアリなどを獲物にしているため、

上方向にはほとんど伸びず、地面に密着した捕虫袋を付けるのです。

 

また、食虫植物が生息する地域には、落とし穴に落ちた獲物を食べるために進化した生物たちが存在しています。

東南アジアでは、ウツボカズラ(ネペンテス)を住処とするコウモリは、

落ちてきた昆虫を捕食していたりもします。

ウツボカズラ(ネペンテス)に依存して生息しているため、

食虫植物と生態系の相互作用が生じているのです。

落とし穴式捕虫器は、獲物を効率よく捕獲するだけでなく、

生態系の中での食物連鎖にも重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

落とし穴式食虫植物の進化と分類

シリーズ第七弾は食虫植物の落とし穴式食虫植物をテーマにしてみました。

いつ頃出現し現在の広域に生息したのか、

どのように進化してきたのか、いかがでしたか?

 

本シリーズは全10記事にて作成しています。

ぜひこの機会に食虫植物の進化の過程を知ることで、

知らなかったことを知れたり、

改めての魅力に気づいたりするキッカケになったらうれしいです。

続きはコチラ
【食虫植物の進化⑧】粘り付け式食虫植物の進化と分類【ネぺ吉の夏休み自由研究シリーズ】

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研究シリーズのまとめはコチラ
【食虫植物の進化:まとめ】食虫植物の進化を知る【ネぺ吉の夏休み自由研究シリーズ】

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  • この記事を書いた人

ネペ吉

ネペンテス(ウツボカズラ)にハマった食虫植物。 仕事はセレクトショップにて8年経験ののちWEB業界に転職した。 柴犬を飼って、自然に囲まれた場所で生活をすることが夢。

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