食虫植物の進化

【食虫植物の進化①】昆虫捕食における捕食器の形と機能の進化【ネぺ吉の夏休み自由研究シリーズ】

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【食虫植物の進化①】昆虫捕食における捕食器の形と機能の進化【ネぺ吉の夏休み自由研究シリーズ】

昆虫捕食における捕食器の形と機能の進化とは?食虫植物の進化を紐解く①

夏休みの自由研究のテーマに「食虫植物」はどうですか?

特異な進化を続ける食虫植物の進化を紐解く研究シリーズです。

大人も子供も楽しめるように、

なるべく文章をわかりやすく書くことを心掛けて書いています。

研究系の内容は小難しい文章や単語が多いですからね、、。

※本内容を転載する際は、「引用:ネぺ吉のブログ(https://nepenthes.jp)」と記載お願いします。

研究シリーズのまとめはコチラ
【食虫植物の進化:まとめ】食虫植物の進化を知る【ネぺ吉の夏休み自由研究シリーズ】

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捕食器の形による昆虫誘引の違いって?進化した理由とは?

食虫植物の形によって、

捕食できる虫の特徴や、各種属の進化してきた理由って、

なんとなくわかってる気がするなあという方が多いのではないかと思います。

それぞれを分解して考えてみました。

食虫植物の捕食器の形にはどのような種類があるの?

捕食器の形には、多様な種類があります。

その中で代表とされるのは主に4つで、

落とし穴式、挟み込み式、粘り付け式、吸い込み式です。

4種類に分けられる食虫植物

落とし穴型の代表種:ウツボカズラ(ネペンテス)、サラセニア、セファロタスなど

捕食葉型の代表種:ハエトリグサ(ディオネア)

粘り付け式の代表種:モウセンゴケ(ドロセラ)、ムシトリスミレ(ピンギキュラ)

吸い込み式の代表種:タヌキモ・ミミカキグサ(ウトリクラリア)

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これらの形は、昆虫の種類や捕食する環境によって異なってきます。

捕食器の形が昆虫を誘うときに与える影響って?

例えばウツボカズラ(ネペンテス)に代表される、落とし穴式の捕食器は、

昆虫を容易に入れることができるため、

入り口が小さな捕触器に比べて効果的に昆虫を誘い込むことができます。

そして、昆虫が落ちてしまうと上に戻れなくなるため、より効果的に昆虫を捕らえることができます。

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ハエトリグサ(ディオネア)のような挟み込み式は

感触毛に30秒以内に二度触れると、

捕食葉が閉まるため、確実に昆虫を捕らえることができます。

一方で、一度閉じるとしばらくは開かないため、

仮に捕えそこなうとエネルギーのみ消費してしまうことになります。

また、一度の捕食では多くの昆虫を捕えることができないため、

効率性に欠けてしまいます。

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このように捕食器の仕組みによって、

昆虫に与える影響は大きく異なるのです。

捕食器の形が進化の観点から重要な理由とは?

捕食器の形は、食虫植物が生育する環境に適応して進化してきたと考えられています。

例えば、高山地帯に生育する食虫植物は、厳しい気候条件の中でも生き残るために、

うぶ毛のような細かい毛を捕食器全体に覆わせていたり、

着実に昆虫を捕えるために淵の部分に凹凸を作り滑りやすくするなど、

同じ種族であっても、見た目も機能も大きく異なるのです。

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今は世界で観葉植物として親しまれている、食虫植物ですが、

その個性的な見た目にも理由はあるんですよね。

昆虫捕食における消化酵素の進化と食虫植物の生存戦略

食虫植物は、昆虫を捕獲して栄養源として利用していることが知られています。

捕食器の形以外にも、消化酵素の進化が食虫植物の生存戦略に影響を与えることがこれまでの研究でわかっています。

食虫植物の消化酵素の種類と機能とは

食虫植物は昆虫を捕獲することで、

窒素やリンなどの必要な栄養素を取り込むことができます。

しかし、昆虫は、高度に進化した体の構造や外皮によって、

消化を防がれることがあるのです。

そこで、食虫植物は、消化酵素を分泌して、

昆虫の外皮や内臓を分解できるようにしているのです。

 

植物の消化酵素には、

・タンパク質を分解するプロテアーゼ

・炭水化物を分解するアミラーゼ

・脂質を分解するリパーゼ

などがあります。

これらの消化酵素は、食虫植物の捕食器内部で分泌され、

昆虫の体内に侵入してから、昆虫の内臓や筋肉、脂肪などを分解します。

昆虫の捕獲と消化酵素の関係って?

捕食器の形によって

消化酵素の分泌量や分泌タイミングが変化することがあります。

たとえば、落とし穴式の捕食器は、

昆虫が落ち込んでから消化酵素を分泌するのに対して、

挟み込み式の捕食器は、昆虫が接触すると同時に消化酵素を分泌することが多いです。

食虫植物の消化酵素の進化には、昆虫の体内の物質を

より効率的に分解することが求められたことが背景にあります。

昆虫の体内に含まれるキチン消化酵素の進化にともなって、

多様な昆虫を捉えらるように食虫植物の消化酵素も進化してきました。

消化酵素の多様性と有効性が、

食虫植物が様々な昆虫を捕らえるのに必要な条件であることが知られているのです。

 

落とし穴式のウツボカズラ(ネペンテス)を例にあげると、、

落とし穴式のウツボカズラ(ネペンテス)は

袋の中に落ちた昆虫を消化するための消化酵素を分泌しています。

その消化酵素の種類や量は、

落ちてきた昆虫の大きさや種類に応じて、

調整され、分泌されるのです。

 

食虫植物の捕食器が昆虫の種類に適応するために、

消化酵素の種類と量が変化することで、

様々な昆虫を捕獲し、栄養源にすることができています。

消化酵素の進化が食虫植物の生存戦略に与える影響とは?

食虫植物の進化は昆虫の進化だけでなく、

栄養源を得るための過酷な生存競争の中で発達してきました。

特に食虫植物が生息している環境は共通して、

用土の栄養が枯渇している環境下です。

 

このような環境の中で、

種の存続、繁栄をするには、

食虫植物が栄養源となる昆虫を見つけ捕獲するために、

高い適応能力が必要でした。

そのため、食虫植物は消化酵素の進化によって、

多様な昆虫を捕獲できるようになってきました。

 

不思議な魅力で人々(食虫植物マニア)を引き付ける食虫植物には

並々ならぬ進化の過程と生存競争があってこそなのです。

捕食器の形と昆虫捕獲の適応する理由

食虫植物の進化において、捕食器の形と昆虫捕獲の適応意義は重要なテーマです。

捕食器の形状を適応に進化させることで、より効率的に昆虫を捕獲することができるようになってきました。

捕食器の形の適応意義と昆虫捕獲への影響

前述の通り、食虫植物には主に4つの捕食器の形に分類できます。

ウツボカズラ(ネペンテス)を例にあげると、、

ウツボカズラ(ネペンテス)は、長い筒状であり、内部に消化液を溜め込むための空間があります。

この形は、長い筒状の形が昆虫を落とし込むのに最適であるため、進化的に選択されたものと考えられています。

内部には粘性のある液体となっていて、

昆虫が捕食器に落下すると、粘性のある液体が表面張力の影響で昆虫を包み込み、

捕食器内部に引き込まれていきます。

昆虫の落下を防止することで

より多くの昆虫を捕獲するために進化したものと考えられています。

モウセンゴケ(ドロセラ)

モウセンゴケ(ドロセラ)ように、捕食器の形が浅く、

昆虫が容易に逃げられる場合でも、

内部に粘着液があることで昆虫を捕獲することができます。

ウツボカズラ(ネペンテス)のような袋はなくても、

昆虫を捕まえられるってことですよね。

ムシトリスミレ(ピンギキュラ)

ムシトリスミレ(ピンギキュラ)のように

捕食器の形状が花のように平らで広がっている場合、

昆虫は捕食器の表面に着陸し、粘着性のある液体に触れて捕獲されます。

このような形状は、蝶などの大型の昆虫を捕らえるために最適です。

蝶や蜂など大型の昆虫を捕まえるのなら、

ムシトリスミレ(ピンギキュラ)のような捕食方法が最適だということです。

捕食器の形が進化の過程でどのように変化してきたか

ウツボカズラ(ネペンテス)の例の通り、

捕食器の形が進化することで、より効率的に昆虫を捕獲することができるようになっています。

例えば、同じ捕食器を持つ2つの食虫植物がある場合、

より効率的に昆虫を捕獲する捕食器の形状が進化的に選択され、生存率が高くなると考えられます。

 

進化の過程で、捕食器の形は、環境の変化や昆虫の種類の変化に応じて変化してきました。

捕食器の形状が変化した結果、食虫植物は、新しい種類の昆虫を捕獲することができるようになったり、

より多くの昆虫を捕獲することができるようになったのです。

昆虫捕食における芳香化合物の役割

食虫植物は、昆虫を誘引するために芳香化合物を放出することがあります。

これらの化合物は、植物の種類や捕食器の形、

さらには環境条件によって異なることが知られています。

芳香族化合物-ほうこうぞくかごうぶつ-

脂肪族化合物と芳香族化合物に大別され、

「芳香族化合物」はベンゼン環に代表されるような

芳香族性を有する環をもつ化合物の総称である。

(引用:コトバンク https://kotobank.jp/)

ネぺ吉
虫をさそう香りってことだね
なるほど
ネペ花

食虫植物が放つ芳香化合物の種類と機能とは

芳香化合物は、昆虫を誘引するために重要な役割を果たしています。

例えば、ハエトリグサ(ディオネア)の捕食器は、

獲物を誘引するためにメチルサリシル酸を放出します。

この化合物は、昆虫にとって甘い匂いがするため、獲物を誘引することができ、

ウツボカズラは、捕食器に対してエチレンを放出することがあります。

この化合物は、昆虫にとって不快な匂いがするため、獲物を誘引することができます。

芳香化合物が進化の観点から重要な理由

芳香化合物は進化の観点からも重要な役割を果たしていて、

食虫植物は、芳香化合物を通じて環境に適応することができます。

例えば、同じ種類の食虫植物でも、異なる地域に生息する個体は、

放出する芳香化合物の種類や量が異なることが知られています。

これは、環境に適応するための進化の結果と考えられていて、

芳香化合物は昆虫を誘引するだけでなく、

競合する植物が同じ芳香化合物を放出する場合、

獲物を誘引するための競争が起こることがあるのです。

このように、食虫植物が放出する芳香化合物は、

昆虫捕獲に重要な役割を果たすだけでなく、進化の観点からも注目される要素の一つです。

昆虫捕食における捕食器の形と機能の進化

シリーズ第一弾は食虫植物の根幹をテーマにしてみました。

なぜ食虫植物の捕食機能が今のような形になったのか、

機能が進化してきたのか、いかがでしたか?

 

本シリーズは全10記事にて作成しています。

ぜひこの機会に食虫植物の進化の過程を知ることで、

知らなかったことを知れたり、

改めての魅力に気づいたりするキッカケになったらうれしいです。

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【食虫植物の進化②】餌の消化と栄養吸収に関わる器官の進化【ネぺ吉の夏休み自由研究シリーズ】

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  • この記事を書いた人

ネペ吉

ネペンテス(ウツボカズラ)にハマった食虫植物。 仕事はセレクトショップにて8年経験ののちWEB業界に転職した。 柴犬を飼って、自然に囲まれた場所で生活をすることが夢。

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